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「もうっ…なんでっ」

呼吸が乱れて、口から上手く言葉が出ない。


それなのに譲は、

「おせーよ、千紗。遅刻」

って、笑顔で言った。


なんでそんな笑顔であたしを迎えられるの?




「おせーよ、じゃないよ。なんであたしの事なんて待ってるのよ。

絶対行かないって言ったじゃん。
こんな寒いのに、風邪ひくよ。

はい、コート」


『でもやっぱり千紗は来てくれた。こんな寒いのに、ごめんな。

コート持って来てくれるとか、さすが千紗』

譲は笑った。




こんな時でも、あたしの心配をしちゃうんだ譲は。

昔っから譲は優しかったよね。