「おとーさんがいたころのご飯ってどんな感じだった?」
「おとーさんとのご飯?」
「うん。ふたりでご飯食べる時も、今みたいにペラペラおしゃべりしてたの?」
あたしには、おとーさんの記憶がない。
2歳になる前に、病気で他界してしまったから。
分かるのは、アルバムの中にいる若いおとーさんだけ。
赤ちゃんだったあたしを不器用に抱っこしてる写真とか、
おかーさんに無理やり腕組みされて斜めってる立ち姿とか、
そういうのを見て、どんな人だったのかを想像するだけだ。
上手じゃないけど、どの写真も笑顔だから。
おとーさんの写真を見る時、あたしは、何となくほっとする。