『クリス……、会い…かっ…。』


声と共に
その時の場面が
鮮明に思い浮かぶ。


いや。…やめて、
呼ばないで。思い出させないで。




忘れていた記憶、

記憶の片隅に封じ込めて
二度と思い出したく
…なかったのに。



『…どうして、
…泣きそう、なの?』


今度はハッキリと声が聞こえた。
雨の中に立ち、切なげに
こちらを見つめている彼。
…左腕が赤く、染まっている。




"泣きそうなのは、貴方じゃない。
そんな目で見ないで。
………分かっているんでしょ?"


私の声も映像と共に
聞こえてきた。

自分の声を客観的に聞くと
凄く、嫌になる。
なんて冷たい声。
なんの感情も抱いていない
機械的な声だった。
淡々と責めるような、そんな声。



突発的に、体が
拒否反応を起こしたのか、
呼吸が段々としずらくなる。

ヒュー、と気管支の狭まる音が
静かな保健室に響いた。



それが合図かのように、

止めて、止めて。と、
私の心がブレーキを掛けている。

これ以上はイケナイ。