一人の老婆が
暖炉の前で静かに座っている。

どこか気品と哀愁を漂わせながら
ただ一人で。


顔立ちからも伺えるように
かつては美しかったのだろう。
けれど、綺麗なブロンドだったと
思われる髪は、今や
時の流れに逆らえるはずもなく
白髪が混じっている。


顔には皺が入り、目の下には隈が。

けれど彼女の蒼緑の瞳だけは
曇る事なく今もただ澄んでいた。


その目はただ一点─彼女の右手の小指にある薔薇のモチーフの指輪に注がれていた。

食い入るようにただじっと
見つめている。


懐かしげで寂しげな瞳で。