次の日、腫れた赤い目。


こんなの恥ずかしい。
絶対……バレるよね?

勿論、嘘の下手な私が隠せる訳もなく、と思っていたのに。



「妃芽?! 何、その目?」

「え……えと。昨日……テレビでね?」

「あぁ! 観た観た!
犬のドラマでしょ? 妃芽、涙もろいもんね」



何だかわからない犬のドラマとやらに大感謝。
涙もろい自分にも感謝。

嘘が信じてもらえたの、初めてかもしれない。
でも、気分のいいものじゃないね。



教室に行くと、矢野君の側には……原田さん。

しかも、手まで組んでる。
私の目線に気付いた波ちゃんが、耳元で、



「何? あの馴れ馴れしさ。
妃芽が彼女だって言いに行くよっ!」

「まっ待って、波ちゃん……。いいの」

「は? 妃芽?」



俯いて涙を堪えながら、波ちゃんの腕を掴んだ。



昨日、せっかく追い掛けてくれたのに。
怒らせちゃったんだもん。

原田さんの方が似合ってるなんて言った罰だね。





そして聞こえてきた声に、また涙が溢れ出しそうになった。



「そーだよ、学。付き合っちまえば?」

「可愛いーし、最高の彼女になるんじゃね?」

「学、やめて俺にしない?」

「やだー皆。私は、学が好きだけど学は……ねぇ?」



原田さんの取り巻きの男の子達の声。


やめて。
矢野君にくっつかないで。

やめて……。
お願い、矢野君を取らないで……。