「それじゃあ、もう行くわね。」


希夜と会うことを思い出した樹里ちゃんはさっさとこの場を去っていく。
希夜が相当いい写真を用意しているようだ。



「凛太郎の許婚というのはあの方なのですね。」


「恭、知ってたんだ。」


「以前、凛太郎と話をしたことがありますので。」


「圭也は知らなかったよ?」


「圭也とはあまりそう言う話にならないんですよ。ほんの数年前に事業を成功させたばかりの圭也の家はまだ政略結婚なんて無縁ですからね。」


「それでか。・・・政略結婚なんて嫌だな。」



自分の好きな人と結婚できないなんて。
まだ好きな人なんていたことないけど、政略結婚はイヤだと思う。



「何を言ってるんです。貴方も他人事ではありませんよ?」


「・・・えぇ⁉」


「この学校にいるということはそれなりの家なのでしょう。」


「うぅ・・・確かに・・・」


なんてことだろう・・・
全く考えていなかったが自分にもその可能性があったようだ。


「まぁ、貴方の父親が考えていることなんて想像がつきませんがね・・・」


「え?」


恭の声が聞こえなくて、聞き返す。



「なんでもありません。あぁ、もう次の出番が近いですね。急ぎましょう。」



「ちょっと待ってよっ」


置いていきそうな勢いの恭の隣にやっと並び、足早にグランドへ向かった。


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