スッと身体が地面から離れる。


え?と思うのと同時に恭に抱えられていることに気づく。
状況が分かったら早い。

熱が顔に一気に集まる。



「ちょっ、ちょっとっ‼は、離せっ下ろせっ‼」


もんの凄く恥ずかしい‼
みんな見てるし‼

まず、腕の中でどこに視線を向けたらいいのか分からない。
顔が顔が顔がっ‼
近いよーーーっ


うわ、これ以上熱くなったら死んじゃうっ‼



「何を言ってるんです・・・・どうせ立てないんでしょう?」



「うっ・・・」


立てないことにすでに気づいていたようだ。

てか、恭ってあんな細い身体で私、持てたんだ・・・
念願のお姫様抱っこ・・・


じゃなくてっ



「やっぱり下ろせっ‼」



「はいはい」


ヒューヒューとどこからかお調子者が口笛を鳴らす音が聞こえる。


「俺は保健委員の補佐として怜悧を救護所へ運ぶ義務があります。おとなしく運ばれてくださいね?」


有無を言わさない口調で、結局そのまま腕の中で縮こまって救護所へ連れて行かれた。

せめてもの救いは、恭の動作がきびきびとしていて事務的な感じで見られ、あまりからかわれなかったことだろう。

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