中に入り、芝生を踏みしめる。
そして、呆然と上を見上げた。
スタジアムの中はすでに大勢の来客で観客席は埋まってしまっている。
私達生徒の競技を、来客たちはしっかりと見ることができるだろう。
2か所ほど大きなモニターが設置されてあり、細かな様子まで写し出されるようになっていた。
お嬢様学校に通っていた際に話を聞いた、アイドルのコンサートの話と似ているような気がする。
「ここまでするかぁ?」
「来客を入れてのイベントは力を注ぐからねぇ~それより見てみてっ‼」
ハルが指さす方を見れば、そこはVIP席で如何にも金持ちそうな太った紳士達が座っていた。
だが、たった1人、ヒョロヒョロに痩せていて、つり目のキツそうな印象の男性が目についた。
あんまりお金持ちそうには見えない。
秘書かなんかだろうか。
「ん?」
「あれ、八巳のお父さんだよぉ~」
「まじかっ‼」
よく見たら目元がそっくり‼
ただ、お父さんの方は背筋がピンと伸びていて、印象は真逆って感じだ。
てか、VIP席。
やっぱりな・・・
「何、つっ立ってんの?」
「うぉっ‼」
噂をすれば、光が後ろから姿を現した。
「あそこに光のお父さんいるっていうから見てたんだ。」
「ふーん。・・・今回は多いからな・・・さっき案内が終わったとこだったよ。」
光はおもてなし委員だから、自分の父親を含め、VIP席の富豪たちを相手にしないといけないんだな・・・
大変だ。
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