悔しいけど口では勝てそうにない。
もちろんその他でも勝てっこない。
怜悧は絶対いつかぎゃふんと言わせてやるんだ、そんなことを考えながらこの場から逃げ出す口実を探す。

立ち向かうと決めたはずなのに、早くここから消え去りたかった。
こんな惨めな気持ちになんてなりたくないよ・・・


だが、希夜は逃げも勝たせもさせてくれないようだ。



「君も大変だね。」



「知ったような口きくッ「応えなくてもいいよ。」‼」




冷たい瞳が怜悧を貫く。



応えなくて・・・いい?




「俺は勘違いしてたみたいだ・・・。応えなくていい。その人のことなんて忘れて楽しい学園生活を過ごせばいいよ。理事長が君に肯定的な今、俺はうかつに動けないし。その方が楽、でしょ?」



今までの行動を覆(クツガエ)すような希夜の発言に、頭がこんがらがる。

希夜は怜悧を逃がさない、泳がせてやってると言っていた。
ほんの少し前まではそうだったはずだ。

楽しい学園生活を過ごせばいいって・・・

急に気が変わったのか?

理事長のせいで?


いや、理事長のことは前から知っていたはずだし・・・

この数分で一体なにが希夜を変えたの?


私はなんて答えればいいの?



「頑張ったって、彼は分かってはくれないよ。」



彼・・・・?



分かってくれない・・・?


呆然と立ち尽くす。


希夜はどこまで、



私を知っているのだろう・・・




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