「ほら、こっち向いて。」
光が救急箱を自分に近づけ、手当ての準備を始める。
目の前に座る鈴音は、光本人が手当てするのかとギョッとした顔をしている。
護衛の人も慌てて光に声をかけた。
「光さま、わたくしが。」
「いい。下がって。」
「かしこまりました。」
"何かありましたらいつでもお呼びください"と護衛の人は出ていく。
「護衛の人にやってもらえば良かったんじゃない?」
怜悧は疑問に思ったことを聞いてみた。
「他にも頼んでいる仕事があるから。」
そうなのか。
まぁそれはいいのだが、鈴音は居心地が悪そうだ。
犬猿の仲だからなぁ。
借りを作ったってことになるのだろうか。
手際がよく、手当てはすぐに終わってしまう。
「はい、終わり。」
「早っ‼慣れてるな~」
「応急処置くらいは出来て当たり前だろ。」
「すいません・・・」
私、出来ません・・・
「・・・・・・・・・ぁりがとぅ・・・」
聞こえるか聞こえないかの微かな声。
怜悧にはしっかりと聞こえた。
微笑ましい気持ちになる。
光は鈴音の声に反応することなく、勉強会は再開した。
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