“恭貴、俺の親父、八巳のとこで働いてるんだ。・・・今回は抜けさせてくれよ”
恐る恐るといったように後ろにいた男が恭貴にお願いするのが聞こえた。
私は地獄耳なのだ。
当然、恭貴は鋭く男を睨む。
泣きそうになりながら、男は続ける。
“他の奴らはともかく、八巳家ならやりかねねぇんだよ。・・・1ッ匹オオカミってウソかよ・・・うぅ・・”
最後は泣き出してしまった。
はぁ~と盛大な溜息を吐く恭貴。
そしてDクラスの出方を窺う私たちを見遣る。
私は絶対に渡さんというような顔つきで恭貴を見据える。
私たちが引く気が無いのを見て取ったのかボスは顔を背け
「行くぞ。」
とこの場を背にした。
案外あっさり引き下がる取り巻き連中。
この面子に恐れをなしたか?
なんてったって架衣斗と藤原さんがいるんだから‼
「覚えておけよッ‼」
甲高い声の男が捨て台詞を吐いてひょこひょこと恭貴の後をついていく。
うん、ダサいな。
よく見ればあの男・・・
ネズミ男に似ている。
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