架衣斗は私たちが知らないことまで知っているようだ。
「希夜に目をつけられているようだから、関われなかったんだ。」
え?
希夜の名前に少年はびくりと震える。
腹をくくるよと架衣斗は片手を差し出す。
少年はその手を取るべきか悩んでいた。
私はそんなことよりも、架衣斗の言葉に動揺してそれどころではない。
どうして?
希夜、私だけだと言ってたのに、他にも目をつけているではないか。
なんなんだ‼
「高龍寺 希夜には内緒にしてほしい。」
その言葉にはっと我にかえる。
私、何を憤(イキドオ)っているんだ。
希夜が目をつけている人間は多ければ多いほど分散されて私には願ったり叶ったりではないか。
希夜の言葉を真に受けたりなんかして。
別にどちらにしろ目をつけられているのには変わりはないのに。
自分は少し勘違いしていたらしい。
希夜は私だけに容赦(ヨウシャ)ないわけではない。
少年にも私と同じようになにか秘密がある。
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