「さっきまでそこに居たんじゃないのか?」
私の声に気が付いた藤原さんが訝(イブカ)し気にこちらに近づく。
「居たんですが・・・」
どこにいったんだ?
焼却炉から動いた気配なんてなかったのに。
「・・・いた。」
凛が小さく声をあげる。
そして指差した先は・・・
「はいッ!?」
なんであんなところに?
「アイツ。忍者なのか?」
圭也が口がポカーンとあけ見上げる。
焼却炉の後ろは火の粉が風に飛ばないように約2mちょっとのコンクリートの壁ができてあり、少年はどうやって登ったのか向こう側とこちら側の厚さ20センチくらいのコンクリートに腰かけこちらの様子を窺(ウカガ)っていたのだ。
呆気のとられていると藤原さんが大きな声で声をかける。
「おーい。危ないから降りて来ーい。」
ビクビクっ‼
警戒しているかのように大きな瞳を細め震える様は、毛を逆立てた子猫のようだ。
「なんか・・・藤原さん怖がられていますよ?」
「今まで怖がられたことなんてなかったのだがな。」
多分圭也を起こす時の藤原さんを見ていたんだな。
あれはすごい迫力だったから。
焼却炉の方で聞こえた鈍いあの音もあの子のだったみたい。
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