ドクドクと波打つ鼓動を落ち着かせるために深呼吸をする。
追っ手は見失ったのかまだ私たちの近くには来ていない。


初めて迷路のような学園の造りを感謝した。


改めて少年の方を見やる。


肩に少しかかる程度の焦げ茶色の髪に高校生には見えない細く小さな身体。
私を見る大きな瞳は怯えてるかのように揺れている。
シャツや、ズボン、全身ボロボロで先ほど転けた時についた両腕の生傷が痛々しい。


「大丈夫か?」

少年は私の声にピクリと反応すると俯いてしまった。



ここもずっと安全なわけでもなくて。



私は光から貰った紙を見つめる。



さぁ、誰に電話しよう。
こんなに早く使う時がくるなんて思いもしなかった。



光に電話したらきっと怒るだろうな。
忠告忘れたのかって。

かといって架依斗には説明が難しそうだ。

圭也は問題外。

恭と凜のアドレスも知ってるが彼等がこの状況を解決するには無理があるだろう。


希夜は問題を悪化させる天才だし、そもそも連絡先を知らない。

藤原さんの番号知ってたらな~


結局のところ今頼れるのは

光か架依斗のどちらかだった。


なぜか2人ならどうにかしてくれる自信があった。

,