独りになった教室で黙々と勉強する。
光がいないだけで、とてつもなく静かに感じる。
マメ知識とかいろんな事を教えてくれる声、間違いを鬼のような顔で叱る声、照れながらもちゃんと解けたら誉めてくれる声、そんな光の声が聞こえないのだ。
居ないんだから当たり前っちゃあ当たり前だが、習慣って怖い。
この空間が少しだけ苦痛に感じてしまった。
淋しがり屋か私は。
30分もすぐにやってきて、私はシャーペンを置いて片付け始めた。
いつもならこの時間には圭也もやってくるんだけど、今日に限ってやって来ない。
仕方なく一人教室を出ることにする。
戸締まりをして、電気を消して、鍵を掛けて、職員室に向かって歩き始めた。
職員室に入るまでもなく鮫島に鉢合(ハチア)わせた。
「お、天世。鍵か?」
「はい。」
「ほら、よこせ。」
少し強引に鍵を奪い取り、”勉強は進んでるかー?”と聞いてきた。
私は戸惑いながらも答える。
「まぁ、ぼちぼち。」
「そうか。・・・暗くなってきたな、」
「はぁ。」
「独りか?」
「はい。」
「なるべく早く寮に帰れ。」
鮫島はさっきから何が言いたいのだろう?
どこか引っかかる物言いだ。
「なんかあるんですか?」
「いいから帰れ。・・・最近Dクラスの連中が動き始めたからな。」
Dクラス。
その名前に私の心臓が跳ねた。
きっとあまりいい事ではないようだ。
アイツ等と関わりたくもないし、素直に早く帰った方が身の安全の為だと思う。
私は鮫島に見送られ、足早に校舎を後にした。
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