「まさかそれだけで学園を去るはずないじゃないですか。」
充分大変そうだけどな。
見透かしたような恭に反発の言葉が出てきそうになるがなんとか飲み込む。
「怖いのはこれからです。」
私と圭也は自分の成績なんてそっちのけでヒソヒソと小声で話す恭の声に耳をすませた。
「成績がクラスで一番下ってだけでこんな目にあう訳ですが、クズになった人にだってチャンスはあります。半年に1回のペースである試験で順位を上げればいいのです。ですがそれが落とし穴でした。」
圭也がゴクリと唾を呑む。
「クズの扱いを見てきた生徒達は誰もなりたがるはずがありません。必死に勉強して、クズだけは逃れようと頑張ります。ですが、現クズもそれは同じです。一度味わった屈辱、成績もぐんと伸びているかもしれませんね。」
なんか先が見えてきた気がする。
「誰もの心が不安定になります。そしてその矛先は全て現クズに降りかかるのです。」
「?どういうことだ?」
圭也にはわからなかったらしい。
だが私は完全に気づいてしまった。
「現クズをそのまま残留させようとするってことですよ、圭也。」
恭が妖しく微笑む。
「クラスによって程度は違いますが、現クズの勉強を妨げたり、Dクラスでは毎年酷いものらしいですよ。」
「学園の成り上がりが多いからな…」
「プライドもズタズタにされ、信頼できる仲間にさえ裏切られることもあるでしょう。まぁ、人それぞれですからわかりませんが。過酷な学園生活にはかわりありません。ですから、辞める人も多いのですよ。」
「それってイジメじゃないのか?学園ぐるみの。」
「そう言う者もいます。ですがこの制度が無かったら今の高龍学園は無かったでしょう。クズを恐れて皆高校では急成長します。だからクズは必要不可欠なわけです。誰かを犠牲にしてでものし上がれ。それが代々続く理事長の考えです。」
どうしてだろう。
あの理事長がそんなこと言うようにはどうしても思えない。
「希夜はこの制度をよく思っていないようですが。」
なぜ今希夜が出てくるのかわからないが、私も希夜と同じだ。
だってクズになって頑張って勉強しようにも阻止されるのってどうやっても報われないし酷いよ。
そもそもクズの制度自体、理不尽だ。
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