開けっ広げにされた窓から涼しげな夜風が吹く。


大きな部屋にはソファーに座るどこか上品な男と、彼の前にひざまずく髪の長い女がいた。


彼女の大きな瞳には優しく微笑む男が映ることはない。


「分かっているんだろうね?」


男の試すかのような声音に女の肩が震える。

彼女の視線はまた下へ下へと下がった。


「・・・はい。」


静かな部屋には儚く消え入りそうな声が響く。


「君には期待しているんだから」

「・・・・・・」


あまりの緊張感に女はそっと息を吐いた。



「どうかな?」


「・・・必ず上手くやります。」


深々と頭を下げる女を見遣りフッと男は笑った。

夜風が髪をサラリと撫でる。


「さぁ、行きなさい。怜李(レイリ)」


「はい・・・・・・お父様。」


怜李という名の女は男の促しにより待ち侘びていたかのようにサッと部屋を出て行った。