父は塗装業をしていて、月・水・金の夜は所属している社会人サッカーチームの練習に行っている。

母は自営業としてスナックを経営している。



「戸締まりきちんとしてね?」



母は心配なのか毎回口にする。

僕はテレビを見ながら、“了解”と言って携帯で電話を掛ける。



「じゃあ行ってきます」



「うん、行ってらっしゃい、頑張って」



ガチャン

ドアの閉まる音が家中に響いた。




『なー‥まだかよ』



電話越しに声が聞こえた。

後ろにまだ誰かいるのかガヤガヤうるさい



「いま降りる」



電話を切った。

コートを羽織り、戸締まりを確認して家を出た。