かっぷくの良い男性が「気分が悪い様ですね。どうされました?」と優しくおばあさんに尋ねた。
すると横から「彼は友人の内科医です。安心してください。」とまたしても優しくおばあさんに声をかける彼を無意識のうちに見つめていた。

「こんなところでお医者様に来ていただくとはお恥ずかしい…大した事じゃないんです。ちょっと久しぶりに着物を着たものだから気分が悪くなっちゃって…」っと恥ずかしそうに言うおばあさんに、「それじゃ、ちょっとホテルの人に頼んで休ませてもらった方が良い。呼んできますね」っと立ち上がろうとしたかっぷくの良い男性だったが、どうやらアタシが頼んだウェイターが人を呼んで来てくれたらしい。


しかし、何故揃いも揃って男ばかりなんだっと悪態をついた。
医者であろう二人は良い。しかし、ウェイターが連れてきたホテルマンも男では、着物が苦しいと言う女性に対して何もできないじゃないか。


しょうがない…どうせ暇だし行ってあのおばあさんを安心させてやるか。っとその場に向かおうとしたら後ろから「おまたせ」っと言う呑気な声が聞こえた。
「あ 雄也」と振り向くと「お偉いさん相手に疲れたよ。帰ろうぜ。」とアタシの手を引く。

「あ 待って。今、おばあさんが…」っと例の集まりに目を向けると雄也はめんどくさそうにアタシの視線を追った。

「え?何かあったの?」おばあさんの方を見た雄也に「何か着物が苦しくって気分悪くなっちゃったみたい。女の人がいなくて不便だと思うしちょっとアタシ、行ってくるよ」っと言うと、「えーいいじゃん帰ろうぜ。あそこにいるの大学病院の加東先生と歯科医の佐竹先生だろ?佐竹先生の方はともかく大学病院の内科医が居るんだし大丈夫だって。それよりも俺、早く家帰って百合抱いて寝たいよー」っと甘えた声を出す雄也にほとほと呆れた。