そうして、また行き交う人達を何気なく見ていると「大丈夫ですか?」と言う声が聞こえた。
無意識のうちにそちらを向くと、着物を着た上品そうなおばあさんが気分でも悪いのか廊下の隅で蹲っていた。


それを見つけたのであろう、30代前半だと思われる長身の男性が心配そうにおばあさんの背中を支えている。

おばあさんは、「すいません…久しぶりに着物を着たらちょっと気分が悪くなっちゃって…」と苦笑いをし、男性に目を向けた。

それを聞いた男性は「ちょっとだけ待っていて下さいね」っと彼女に念を押すと、焦った様に会場の中に入っていった。


その様子をぼんやり眺めながら、ウェイターに伝えるくらいはしてやるか…っと、アタシも会場に入った。


ウェイターを見つけると廊下で着物が苦しくって気分が悪いと言っている女性がいるから助けてあげてほしいと告げると、あの男性はどうしたのだろうと辺りを見渡した。


すると、おしぼりと水が入ったグラスを片手にもう1人かっぷくの良い男性を引き連れ、会場の外に向かう彼を見つけた。

その様子をまたぼんやり眺めながら、野次馬精神でその後を見ようかと同じく会場の外に出た。