就職難といわれているこの時代に転職を考えたのは他でもない彼に目をつけたからだ。…そう。[先生]と呼ばれているあの人の事だ。

彼と出会ったのは本当に偶然だった。

当時付き合っていた薬品メーカーで営業マンとして勤めていた雄也にお偉いさんが集まるパーティーがあるんだけど一緒に行かないかと誘われた。


聞いてみると、最近仕事が上手くいかない雄也に上司からそこのパーティーで客を掴んで来いと言われたらしく、「スーツさえ着ていきゃ、俺の後輩だと言っても怪しまれないよ。休日にそんな所行って仕事する気にもなれないし、一緒にホテルの飯食って適当に帰ろうぜ」と言う彼にそんなだから、出世もせずにずっとそのお偉いさん達にコキ使われるんだよと心の中で悪態をつきながら「いいよーホテルのご飯なんて楽しみだな」と笑っておいた。