PM7:30

チャイムがなった。
もちろん夫の幸平の帰宅なのだが、沙雪は必ずインターホンのモニターも全てチェックして、幸平を確認してから開ける事にしている。


珍しく幸平は機嫌が良いようだし、珍しくお土産まで買ってきている。

『今日職場の近くでたくさん人が並んでたんだよ。沙雪好きだろ、ドーナツ。』

幸平が並ぶのが嫌いなのは知っていた。
だからディズニーランドだってデートに一度しか連れて行ってくれなかった。

例えば話題の店でのランチやディナーもだ。

その幸平が、わざわざドーナツを買ってくるというのはどういう事か。

もちろん今日の夜に彼は私を求めてくるだろう。
夫婦だから当たり前だが、幸平はわざわざお土産を買ってきて、そんな夜。
彼はまるで毎日の事のように、慣れた手つきで私に触れてくるのだ。

そして沙雪はそれを自分の使命のように感じながら、時間を過ごす、そんな夜。