**紫乃**
707号室の前で、膝を抱えてひとり寂しく涙を流す。
もう、どれくらいここで、泣いているのか自分でもわからない。
ただ、ホテルでひとりきりになってしまった不安と、ラウンジで見た先生のお見合い現場が私の頭から離れない。
綺麗で、品がある素敵な瞳さんと、微笑みながら会話を交わす先生は大人で。
やっぱり先生は私にとって、遠い存在の人だったと再認識させられた。
こんなことを考えているとまた、とめどなく涙が頬を伝う。
もういっそのこと、大きく泣き声を張り上げて泣いてやろうかと、自暴自棄な思いに囚われた。その時。
私の耳に、大好きな先生の声が響いた。