だから警察は、怨恨関係で捜査をしていたようだが、何度聞かれても、俺個人は刺されるほど恨まれるようなことをした覚えはない。


となると、オヤジの仕事関係――


俺は一人っ子だったけれど、近所に叔父夫婦が住んでいて、彼らには俺より一つ下の従兄弟がいたし、交流の深い近所の人や、もちろん学校の友だちなど、被害が及ばないとも限らない。


その頃は、親戚関係はみんなピリピリとしていたし、俺はもう、友だちと話すことすら怖くて仕方が無かった。
もう、女にモテたいとか、そんなことを言っている場合ではなかった。



むしろ女のほうが、怖かった。






あれから、5年が経った、今となってはその事件のことを、ずいぶん遠い昔の事のようにも、つい昨日のことのようにも思い出す事ができる。
事件以来、俺は部活を辞めて、ほとんど友だちを作る事もせず、朝起きて、学校へ行き、家へ帰り、予習と復習をして寝る生活だった。

それが良かったのか良くなかったのか、それなりの成績を3年間キープして、苦も無く大学に入れたのは、本当に、良かったのか、良くなかったのか――