正確には、俺は


「薄田ユギトさんですね?」


と確認された。確認をしたということは、事前に俺のことを知っていて、最初から俺を刺すつもりでいた、ということだ。

あのとき田んぼに立っていたのも、俺のことを事前に調べていたということだろう。


ただ単に刺すだけのつもりだったのか、殺す――つもりだったのかは、今となってはわからない。
ただ、あれほどためらい無く他人を刺せる人が、腹を刺しただけでは死なない、ということを知らないとも思えない。
俺は内臓は傷ついたが、その後偶然通りかかった車に助けられた。


しかし、その時偶然車が通らなければ、俺は確実に出血多量で死んでいた。


確かに車が通ったのは本当に奇跡だと思う。あの田んぼ道で車や、他人にすれ違うのは、三日に一度、あるかないか、くらいだからだ。
しかし俺のことや道のことを、彼女が事前に調べていたのであれば、もっと残酷に俺に止めをさせたはずだと思う。


それをしなかったのは、殺すつもりがなかったからか、それとも別の理由があるのか。