通り魔。



そんな言葉がニュースに出て、俺はほんのすこし、世間を騒がせた。


ただの通り魔事件と違っていたのは、俺がIT企業の社長の息子だと報じられたことで、ライバル会社の恨みや妬みの犯行という説が有力だとされたが、息子の俺はオヤジの仕事に関しては全く関心がなかったので、そうだとしたら、俺は逆にオヤジを恨まなければいけなかったのかもしれない。


しかし、実際は生き残った俺のことを一番心配してくれたのがオヤジだったし、あまりに世間が騒ぐので、俺のほうがオヤジに対して申し訳なく思った。




そのほかに、無差別の通り魔という説ももちろんあったので、俺の住む地域はにわかに緊張感が高まった。
警察が毎日パトカーで街を巡回したり、近所の小学校は集団登下校になった。



ただ、この事件は、正しい形で世間に報道はされていない。