俺は否定も肯定もしなかったが、立ち止まってしまったのが、肯定の証になってしまった。

しかしこちらが何も言わずにいると、彼女は俺に近づいてきて、ただ黙って、手に持っていたナイフを俺の腹に




刺   し   た








そう、彼女は何も言わず、ためらいも無く、他人の――人間の腹にナイフを突き刺したのだ。

彼女がナイフを持っていたことには、全く気づかなかった。
暗闇で見えなかったと、後になって何度も言ったが、事情を聞いた警察は、あまり納得がいかないようだった。


俺はもう、驚くとかそういう次元ではなくなって、ただわけがわからないまま、噴出す血に焦りを感じることも無く、自転車ごと、横に倒れた。



…痛い



死ぬほど痛いという感覚が起こったのは、すぐのことだったが、しかしその時もう見えるところに女はいなかった。