「お客様」

いきなり宮城は切な気な目のままで言った。
いつの間にかあたしは宮城に「お客様」と呼ばれるのが嫌になっていた。こんな事を思う自分はおかしいと思う。自己中心的すぎると思う。

「Locks以外に、好きな歌手はいるんですか?」

「え・・・別に、いません」

あたしは心の中で「なんでそんな事聞くの」と思いながらも答えた。あたしの好きな歌手なんてこの人にとってどうでもいいことで、聞いたから何になるというのだろう。ここの店の繁栄にでも繋がるのだろうか。

「そうですか」

宮城はまた「少し待っていてください」と言いスタッフルームに入っていった。なんだかよく宮城 恭哉のことが分からなくなってきている。もともと宮城について知ってることなんかほとんど無いけれど。
でも何故か宮城のあの眸がとても気になった。何か嫌なことがあったに違いないけれど、そんな事あたしが考えても本当に意味が無いことだ。向こうだって「余計なお世話だ」と感じるだろう。