「それではレジのほうへどうぞ」

今日の宮城は昨日の電話の時とは少し違う雰囲気だった。
一言で言えば「暗い」だ。何か嫌なことでもあったのだろうか。
いや、こんな事ただの客のあたしが考えても何にもならない。一言で言えば「無駄」だ。

「1050円になります」

宮城が言った。
ぼーっと考えていたあたしは財布を慌てて鞄から出し、慌てながら財布のチャックを開け、慌てながらお金を出した。あまりにも慌てすぎて、何故こんなに慌てているのか分からないほどだった。宮城に笑われているかもしれないと思い、カウンターの向こうにいる宮城の顔をちらっと見てみる。
宮城は明らかに初めて見たときとは全然違う表情であたしを見ていた。あたたかさの無い目だった。その眸に残っていたのは切なさや悲しさだけに感じる。あの時みたいに無邪気に笑ってるんじゃないか、なんて考えたあたしはやっぱり馬鹿だったのかもしれない。きっとあの時の笑顔を昨日の電話の優しさも、営業スマイルとただの接客なのだろう。この店は多分、接客を何より大事にしてるのだ。

そう考えると、どこかで浮かれていた自分が馬鹿みたいでまた泣きそうになる。