宮城 恭哉は、泣いているあたしに「大丈夫、大丈夫」と言って落ち着かせた。
「なんで泣いているの」とは一回も言わなかった。あたしが泣いている理由も知らずに、ただただあたしを落ち着かせてくれる。

「明日、お客様に素敵なプレゼントを差し上げます。楽しみにしていてくださいね!」

少し無邪気に宮城は言った。あの時に見た宮城の優しくて無邪気な笑顔を思い出す。きっとこの人は、誰よりも輝いた笑顔を見せる人だ。

「・・はい、楽しみにしてます・・・今日は・・ありがとう、ございました・・」

やっぱり、電話の最後の最後まで声が震えるのは治らない。本当に自分はダメな人間だ。ちゃんと、感謝の言葉を伝えたいのに、言いたいのに。

「いえいえ、どういたしまして。・・・明日、来てくれるの待ってますから」

そう言った宮城の声は、今までで一番優しく感じた。あたしを安心させる声だった。やっと落ち着いた涙もまたぼろぼろとこぼれてきそうになる。

「・・はい。また、明日」

「また、明日」

最後のやりとりが、店員と客ではなく普通の男女みたいで少し嬉しかった。
ゆっくりと右耳から受話器を離して、ゆっくりと受話器を置いた。
言葉では言い表せないような切なさと、あたたかさが、また眸からこぼれた。