「すみません、お客様。いきなりこんな事言われたらそりゃ何も言えませんよね。でも本当に・・・」

長い沈黙を断ち切ったのは宮城だった。少し慌てているような声だった。この人の慌てている声はなんだか新鮮に感じる。

「いえ・・・・・・嬉しかった、です」

慌ててきた宮城の声に対して、あたしの声は段々と落ち着いてきた。さっきの長い沈黙の間、自分を落ち着かせるのに必死だったと思う。
まだきっと数分しか電話していないと思うけれど、宮城 恭哉の事がいろいろと分かってきている。まず、この人は【ドキドキさせるような事を相手がどれだけ照れようと言う】という事。

「ありがとうございます。もう、本当に俺なんて店員失格だと思いましたよ。本当に、なんだか恥ずかしい。・・・あ、あの、Locksの新曲の件なんですが」

宮城は、恥ずかしさを早く消したいのか段々と早口になっていった。あまりにも早口で話すので、思わずあたしは笑ってしまい、宮城は途中で「あ、本当にすいません、俺すごい早口ですね」と言って今度はとてもゆっくり話してくれた。また一つ分かった【とても単純で素直】という事。