「そんなことあるわけ、ない」

普段はほとんど言わない独り言なんかを言ってしまう。
ふっと浮かんできたあの言葉に、少し動揺しているみたい。今まで、あたしの人生の中で【一目惚れ】なんて言葉が浮かんできたことは一度も無かったから。慣れない言葉に、少しだけ、動揺している。

【一目惚れ】なんかしてない。
ただ、あの人の声、あの人の眸、あの人の優しさ、あの人の全てに惹かれただけ。

それだけだよ、それだけ。

そう自分に言い聞かせている自分がなんだか馬鹿らしくて、恥ずかしくて、誰もあたしのことなんか見ていないのに、赤く染まっていく頬を両手で隠した。