「売ってないならすぐ帰ってきなさいよ。どこでうろちょろしてきたのよ、ほんとにもう」

お母さんが説教をしそうになったから、あたしは急いで自分の部屋に逃げ込んだ。
着ていたコートをハンガーにかけて、ベッドに寝転ぶ。身体が熱を持っているからか、ベッドが冷たく感じた。

まだあの声が耳に残ってる。そっと耳に触れてみるととても熱い。
きっと、あの人・・・宮城 恭哉の隣にいた時はもっと耳は熱く、赤く、頬も熱く、赤く染まっていたのか。真っ赤になった自分を想像すると思わず笑いがこみ上げてきた。

ただぼーっと天井を見つめて、何分たったのだろうか。
【一目惚れ】という言葉かふっと頭に浮かんできて、落ち着いてきた熱もまた上がり始めた気がした。