「お帰りなさい。随分遅かったのね」

リビングから、お母さんの声が聞こえてきた。テレビを見ていたのだろう。ワイドショーの、五月蝿いコメンテーターの声もうざったいほどに聞こえてくる。コメンテーターというものは好きになれない。ワイドショー自体、あまり好きではない。

「遼、CD買ってこなかったの?」

お母さんは、あたしがCDショップの袋を持っていないことにすぐ気づいた。「どうせワイドショーに夢中で気づかないか」と思っていたけれどやっぱり無理だった。

「ちょっと、売ってなくて」

あたしはそう言って冷蔵庫を開けた。中から冷えたミルクティーを取り出して、少し飲む。
今は冬真っ只中の1月で、外にいたあたしの身体は冷え切っているはずなのに、何故か身体は少し熱をもっていた。頬のあたりを触ってみると、なんだか熱い。