テレビではクリスマスのイルミネーション特集をやっていた。



「きれいだな~」



フォークを口に咥えたままきれいなイルミネーションにため息が漏れる。



そんな羨ましそうな杏梨の顔を見て雪哉は意外に思う。



あの事件があってから異性と出かける事はまずないのだから、恋人とイルミネーションを見に行くというイベントに嫌悪感を抱いていると思っていたのだ。




この場所……家から近い……。

ゆきちゃんは行った事があるかな……。

もちろん行った事があるよね。



昔から彼女が途切れる事がなくいた雪哉ならばあるはずだと杏梨は考えてしまい顔が曇った。



「見に行こうか」


顔を曇らせた杏梨を見て雪哉は言っていた。



「見に……行く……?」



何の事か分からなくてポカンと口を開けたまま雪哉を見つめている。



「もちろん、イルミネーションを見にだよ」



「彼女と行かなくていいの?」



杏梨の言葉に雪哉は小さなため息が出た。



「杏梨、行きたくないのか?」



「……行きたいっ!行くっ!連れて行って!」



「よろしい じゃあ、隣に行って車を取って来るよ」



「バイクでいいよっ!」


自分のは原付バイクだからひそかに雪哉の大型バイクに憧れていた。



黒のダッフルコートに手編みのマフラー、同じ毛糸の帽子を目深(まぶか)にかぶりヘルメットを装着した。



ちょっときついのは仕方がない。



最後に手袋をはめてバイクにまたがっている雪哉の腰に腕を回す。



落ちないようにゆきちゃんの革のライダーズジャケットの上からぎゅっと手を組み合わせた。