食べながら会話が弾む。



「ゆきちゃん、一緒に食事する人いなかったの?」



杏梨にとってはすごくうれしいことだが。



「まあね」



雪哉は言葉を濁した。



クリスマス・イブを過ごす特別な人。



杏梨以外思い浮かばない。



数人の女性から食事に誘われたが仕事は忙しかったし、誰よりも杏梨と過ごしたかった。



人が苦手な杏梨だから外でイブを過ごす事はまずないと思ったが、貴美香さんに電話をかけて確かめた。



だから杏梨の親友が熱を出して来られなくなった事は知っていた。



だが、夕食を食べ損ねていたのは杏梨らしいと心の中で笑った。





ケーキを取り分けている杏梨を眺める。



紺色のトレーナーにダボッとしたジーンズ、髪は短く、まるで男の子のようだ。



それでも雪哉はかまわなかった。



「どうぞ ゆきちゃん」



大きく取り分けたケーキを雪哉の前に置く。



そして自分の分も大きく取り分けた。



砂糖で出来たサンタクロースを自分のケーキの上に置きにこーっと笑う。



「どうせ食べられないんだろう?」



サンタクロースはもとより、動物で出来た砂糖菓子も可哀想で食べられない事を知っている。



「うん 見ているだけでいいの♪」