「アイツ、何か変なこと言ってねぇ?」
「………」
う~ん、変なこと変なこと。
「あっ」
「やっぱり」
「オウンゴールしたとかなんとか言ってたよ。どういう意味かな?」
「∑アイツ」
オウンゴールの単語を聞いた瞬間、佐野くんがビックリしたような怒ったような雰囲気になる。
「あ、でもそれは翔子、」
「陽斗にはあまり近づくな」
「へ?」
暗くても街頭の灯りで佐野くんが真剣な顔だってわかったから、何となくで頷いてしまった。
何かマズッたかなぁ。
幸せな気持ちから気まずい雰囲気へ一直線。
そのまま無言でいたら、いつの間にか家に着いていた。
「送ってくれてありがとう。また明日、部活も頑張ろうね」
「あぁ、また明日」
今までの無言を払拭したくて最後は笑顔で飾った。
佐野くんも笑ってくれたからホッとした。
でもでもせっかく佐野くんが送ってくれたのに後半は無言沈黙。
ガッテム!!!!!
辺りに佐野くんは居なくて安心した。
絶対ガッテムって口に出てたってすぐにわかった。
だってバイトに行くお兄ちゃんが玄関先でしゃがんで爆笑してるから。