悪いやつではなさそうだな。思った。礼を言える人間は、そうだ。

そう思うと、興味が沸いた。


「あのう」

「はい」

「あなた、どうしたんですか」

「何がですか」

「だって、変ですよ、あなた。」

「何がですか」

「こんな雨なのに、傘ささないで、やけに薄着で、でも手袋をして」

「変ですか」

「変です」


いったとたんに、男は笑った。自嘲気味に。ちょっと、その辺では見ない深淵が、浮かんだ。後悔は、してない。