どうしようか。こいつ、何に気付いた。どうしようというんだ。


怪しまれてはいけないと隣に滑り込ま、至近距離で見た顔は人畜無害といった顔だった。でも、整ってはいる。整然と並べられた惣菜のようだ。クラスに一人くらいいるような顔だ。けっこう、こういうやつの方がもてる。



「そうですか」

寒いといいきるそれに、軽く相づちした。それよりも、どうやって目的を果たすかだ。


びちゃりびちゃり。水音に合わせて体温が奪われるようだ。息も切れていた。


「あのう」


「なんですか」


「使いますか」


男がハンカチを差し出した。花柄の可愛らしいハンカチ。すごい趣味だな、と思った。


「ああ、ええ」


けっこう。言おうとしたら、押し付けられた。頬にべっとり。随分濡れていたことに気付く。


「ありがとう、ございます」

言うと男は笑った。ちょっと、その辺にはいない笑い方をする、男だった。