歩みながら彼岸花を見ているうちに、なんだかこの花がいいような気になりまして、
「これで描いてみようかなぁ」
と独り言のようにゲンに伝えました。
「描いてみろ」
ゲンは歩みを止めずに返し、あちらではリコリスと言うのだそうだ、と付け加えました。
「何?」
私が聞きとれず問うと、彼は足を止めて私に向き直りました。
「リコリス」
「リコリス」
「ギリシャの女神の名だそうだ」
彼はそう付け足しました。
私はゲンから彼岸花に視線を移し、その造形に注視し、ギリシャの女神とこの花を重ねました。
そしてこの花が女神の花冠になっていたらさぞかし綺麗だろうと思いました。
「日本では彼岸だとか曼珠沙崋とか死人花とか、とにかく暗くっていけない。女神に例えるくらいの抜け感が必要だとは思わんか」
彼はそう言い、そういう気概で愛でてやればいい、と言い残し、また歩を進めて行きました。
私は手渡されたその赤い花を握り、下宿している先へ持ち帰りました。
「これで描いてみようかなぁ」
と独り言のようにゲンに伝えました。
「描いてみろ」
ゲンは歩みを止めずに返し、あちらではリコリスと言うのだそうだ、と付け加えました。
「何?」
私が聞きとれず問うと、彼は足を止めて私に向き直りました。
「リコリス」
「リコリス」
「ギリシャの女神の名だそうだ」
彼はそう付け足しました。
私はゲンから彼岸花に視線を移し、その造形に注視し、ギリシャの女神とこの花を重ねました。
そしてこの花が女神の花冠になっていたらさぞかし綺麗だろうと思いました。
「日本では彼岸だとか曼珠沙崋とか死人花とか、とにかく暗くっていけない。女神に例えるくらいの抜け感が必要だとは思わんか」
彼はそう言い、そういう気概で愛でてやればいい、と言い残し、また歩を進めて行きました。
私は手渡されたその赤い花を握り、下宿している先へ持ち帰りました。