「そうだ、なんで堤巳兄様は湖子のことを湖子殿って呼ぶのかと思っていたんだけれど……」



 先ほどの理由と照らし合わせてみれば、簡単にわかることだった。



「義兄妹になるからだったのね……」


「正解。俺はこの屋敷の中で、湖子殿のことは特に気に入っていてね。遊びに来た時は彼女を呼んでもらって、話相手になってもらうんだ」


「へぇ……」


「蘭花様、堤巳様は……」



 …………。

 私はチロッと湖子に視線を向けた。



「……名前。様つけちゃダメって約束したでしょ?」


「けれど、それは」



 反論しようとする湖子を、目で抑え、見よう見まねの真人お父様的にこにこ笑顔を堤巳兄様に向けた。

 次いで、現代にいた時のまり子の仕草を思い出しながら、小首も傾げてみる。



「堤巳兄様なら気になさらないわ。でしょ?」


「気にしないよ。女の子同士が仲良くする姿は見ていて和むからね。それに、湖子殿がここまで気を許す相手、というのも珍しいんだよ?」


「つ、堤巳様、それ以上は……っ!」