「わ、わーい、嬉しいですわぁ、本当にありがとうございますぅ」


「……期待した俺が馬鹿だった」


「何ですって?!」


「そんなにわざとらしくされるくらいなら、されぬ方が数倍マシだ」


「あなた……ひ、ひどい!」


「うるさいっ!」


「ひどいひどいひーどーいーっ! 人道外人間! 鬼畜男! 冷血漢!」


「そこまで言う必要があるか!? 俺は命の恩人だろう?!」


「わぁー、ありがとうございますぅー。でも、恩を強要するなんて、イイ男のすることじゃないわ」


「失礼なことを申す女だな!」


「失礼なのはどっちの方よ!」


「オマエ以外におるかっ!」


「失礼なのはあなたよ!」



 なけなしの敬語も、さてはてどこへやら。

 けれど、目の前のこの男との舌戦に、それは不要と思われた。