「まず、そちらから名乗るのが筋であろう。雄たけびの姫君?」
「お、雄たけびって……っ!」
そりゃあ、叫んではいたけど……けどっ!
そこまで言うことはないと思う。
いくらなんでも、ストレートすぎる。
遠慮って言葉を学んでほしい、と切実に思った。
「そんな御方に名乗る名など、ありません」
『おととい来やがれ』、という意味をた~っぷり込めて、そう言い放ってやった。
もちろん、笑顔で。
こんな失礼なヤツに名乗る必要性なんて、あるもんですかっ!
自分の負けず嫌いな性格に、自分でもほとほと呆れてはいるのだけれど、これはもうどうしようもない。
私の中で、この『失礼な男』は、『イケスカない男』というレッテルをべったりと張られていた。
「ほぉ……、なら俺も名乗らぬ。で、雄たけび女。オマエなぜこんな所であれほどの大声を?」
「そ、それは……」
痛い所を突かれた。