勢いよく振り返る。

 すると、そこにいた人物に、思わず目を奪われた。



 誰……?



 馬に乗っているからよくはわからないけれど、河瀬ほどではないにしろ、それでもこの時代の人間としては十分に高い身長だろう。

 整った顔立ちの、まるで精巧な人形のよう。

 けれども、その顔は人間のように無機質なものではなく、人間である、という証拠に頬がわずかに上気して桃色に染まっていた。



 濃い紫色の服をまとったこの男の人、おそらく二十歳前後だろけれど……ずいぶん、いい身なりをしてる。

 きっと、真人お父様と同じような朝廷の人なのかも。

 服、多分色違いだろうし。

 今は帽子を被っていないようだけれど。



「ど、どちらさま……?」



 ああ、私って、本当にボキャブラリーが少ないっ!

 後で湖子に頼めば教えてくれるだろうか……。

 ……目一杯叱られてからなら、教えてくれそう。

 だけど、お説教は……あーやだやだやだやだ。

 考えたくもない。