「お父様」
「おお、なんじゃ蘭花」
朝早く、朝廷に出仕する前の真人お父様を捕まえた。
相変わらず、水色の服を着ている。
昨夜の湖子による『飛鳥常識講義~初級中の初級編~』によれば、それらの服は色違いで十二色あり、朝廷で働く人の制服のようなものなのだそうだ。
ちなみに、真人お父様の水色は小仁という位で、上から四番目であるらしい。
他にもいろいろ教えてもらったのだけれど、覚えきれなかった。
聖徳太子の冠位十二階の実態が、スカート付きの制服っていうことに、昨夜の私は唖然としてしまったけれど。
そして、昨夜、湖子による常識講義の後に思いついたことを宣言してみることにした。
「私、ちょっくらこの辺りを探検してみようと思います!」
いきなり宣言されてしまった真人お父様は……がーんと頭の上に文字が出てきそうなほどに衝撃を受けたようだった。
「……お父様?」
「そ、そうか、蘭花はこの辺りのことは初めてなのじゃったのぅ……」
真人お父様は、そう呟くと、物悲しそうにヒゲを撫でた。
この辺りのことを知らないってことを考え付いたのは、湖子だ。
田舎から出てきた世間知らずの遠縁の娘、という設定にしておけば、とりあえずは誤魔化せるらしい。