「……信じたの?」



 恐る恐るといった体でそう尋ねると、突然、湖子さんは真顔になった。



「蘭花様がそんな信じがたい嘘を堂々とつく御方には見えませぬゆえ。そのような簡単にバレそうな嘘ならば、誰もつきますまい」



 確かに。

 湖子さんの言葉に、深く納得してしまう。

 こんなに簡単に『アンタ頭おかしいんじゃねぇの?』と言われそうな嘘ならば、すぐバレるだろうし、誰もつこうなどとは考えないだろう。

 だからこそ、信じた。

 信じてくれた……。



「それに……いつの時代の方であろうとも、今のあなた様は、わたくしにとっての主人にございまする」


「湖子さん……」


「蘭花様、どうか、さんはおつけなさいませぬようお願い申し上げまする」



 そう言い終えると、湖子さんは深々と礼をした。

 幼い顔立ちなのに、彼女が纏う雰囲気はすでに大人の女の人のモノ。

 彼女は、凛とした、まるで百合の花のような女性。

 そして――私が、この時代で初めてタイムスリップのことを話すことになる人。



「……その話題は、後にしましょう。それより、教えていただきたいことがあるんだけれど……」


「なんなりと」