「さて、蘭花殿」


「……何でしょうか、真人さん」



 人払いをした、午後の日光が穏やかに差す部屋。

 そこで、真人さんを前にして、出されたお茶をズズッと飲んでいた。



 改まって、何だろう。



 にこにこと笑って、真人さんはたくわえられたヒゲをゆっくりと撫でている。



「わしの養女になる気はありませんかの?」


「へ?」



 養女?

 養子の女の子バージョンってことだよね?



 あまりに突然なことで、自分の中でそっと単語の確認をしてしまった。



「そうじゃ。蘭花殿は、どうも身寄りのない様子。母御殿がどうなされたかまでは、わしにはあずかり知らぬことであるのじゃが、困っている可愛い娘を見捨ててはおけぬよ」



 ああ、この人は丸っきり善意から行動してるっ!



 現代の人たちに見習わせたいほどの、真人さんの素晴らしすぎるボランティア精神に感動した。



「でも、真人さんにはご迷惑ではないのですか……?」


「なぁに、姪っ子を引き取ったと思えば迷惑なんて思わんよ」



 ケラケラ笑う真人さん。