ゴホン、と軽く咳ばらいが聞こえて、蘇我倉山田石川麻呂さんから視線を外す。

 そして、聞こえた方――ひょうたん頭の男の人の方へと向き直った。



 それを確認して、真人お父様が紹介に入ってくれた。



「こちらの方は、中臣鎌足殿じゃ」



 なかとみのかまたり。



 ひょうたん頭の、腹に何かを抱えていそうなオジサン。



 この人の名前は聞いたことがある。

 大化の改新の主要人物の一人。



 この人が……。



 マトモに名前を知っている歴史人物に出会ったのは初めてで。

 なんとなく感慨深くなってしまう。



 ああ、私はやっぱり、本当に過去に来ちゃったんだな、と実感してしまう。

 今までは、事実として認識していたけれど、それでもやっぱり現実感なんてものは無く、なんとなく、という感覚だった。

 けれど、今ここで、私は本当に名前を知る人を目の前にしている。