けれども、いい加減首を上向けているのが辛くなってきた。
相手はそれなりに高い身長の持ち主。
見下ろす側は辛さなんてないのだろうけれど、見上げなければならない側は、それなりに辛い。
首が痛くなってきた……。
「……お父様、ご紹介していただけませんの?」
堤巳兄様直伝の、にっこり余所行き用微笑を発揮してみる。
ただ、これは真人お父様には効かないのだけれど。
変わらないにこにこ笑顔のままの、真人お父様。
チラリと横目に盗み見た高い身長の失礼男は、若干顔を引きつらせているように見えた。
ざまぁ見ろ!
そう叫ばなかった私を誉めて欲しくなる。
ちなみに、心の中で優越感に浸りながら笑っていたのは、内緒だ。
「そうじゃったの。お三方、これがわしの養女となりました蘭花でございます」
「初めまして、蘭花でございます。以後、お見知り置きを……」
恐怖の代名詞ともいえる鬼畜家庭教師に叩き込まれたとおり、優雅に、そして上品に礼をとった。