そうだ。
今は集中しておかないといけなかった。
私たちは今、とあるお方の屋敷の一室に通されているらしい。
調度品から判断して、おそらくは、応接室のようなところ。
相手方の身分を高いんだろうな、と思わせられてしまうような調度品の数々が部屋の中に安置されている。
どこかで見たことのあるような、と思ったら、日本史の資料集でだった、と思いだした。
何だったっけ……。
確か、正倉院なんたらかんたら、ってヤツだったような……。
結局、いくら思い出そうとしても、元からそれほど覚えてはいなかったのか、全く先が出てこなかった。
「で、お父様。どなたなのですか?」
「ふぉっふぉ、相手方がお目見えしなさったら紹介するのでの。もうちょっと待ちなされ」
さっきから、この問答が幾度繰り広げられたことか。
いい加減数えるのも面倒になって来て、私は諦めることにした。
それでも、話題がなくなると、興味があるのも手伝って、また同じ質問を繰り返してしまうのだけれど。
そして、また待ちくたびれてしまって、同じ質問を真人お父様にしようとしたその時。